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主な研究内容

水産食品を対象にした生化学的研究

生化学
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常識的に、血は赤い。では、どの生き物の血も赤いのか?左上の写真は食用のエビから採血?した、エビの「血液」です。では、この中には何が入っているのでしょう?人間などの血液と同様、酸素を運ぶタンパク質が大量に入っています。酸素を運ぶタンパク質が、薄青い色をしているのです。

エビなどの酸素運搬タンパク質はヘモシアニンという名前で、大きさは1センチメートルの百万分の一程度。これまでの研究で、左下の図のような形をしていることが分かりました。この、「酸素運搬タンパク質」とそれに近い関係にあるいくつかのタンパク質の興味深い役割について調べています。

主な研究成果

Masuda. 2021. FishSci
Masuda et al. 2020. ArcBiochemBiophys

Masuda et al. 2018. FoodChem.

Masuda et al. 2014. FEBSJ.

主なトピック

①エビ・カニの見た目と美味しさについて

 エビのお刺身。私たちは、薄く赤みがかった透明感のあるものを想像すると思います。これがどす黒く汚れたような外見になると、食欲をそそるでしょうか?酸素運搬タンパク質の仲間がこの反応に関係しています。このような変化が起きないようにするため、タンパク質の形と働きを分子のレベルで調べています。そこには、色の変化にとどまらない発見があるはず?

②エビ・カニはどのように病原体から身を守る?

 私たちも風邪をひくように、エビ・カニも病気になります。特に養殖場など多くの個体を飼育する場所で病気が蔓延すると大変なことになります。「酸素運搬タンパク質」とその仲間はエビ・カニが病気から身を守る免疫反応に、深く関わっています。これらの働きを詳しく調べると、養殖場などでの病気の蔓延を抑えることができるかも?

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渓流域における系統地理学および
​ 集団遺伝学的研究

系統地理

深い緑に覆われた山々を縫うように流れる清澄な沢。これは日本人にとって原風景の一つではないでしょうか。

このような川の源流には、そこにしか棲めない美しい魚たちが生息します。そして、そのDNAには、魚たちの来し方だけではなく、日本列島の地形が形成される変遷も刻まれているはず。源流の魚たちのDNAから、川の流れと地形形成の歴史を探る。そんな壮大かつロマンあふれる研究です。

主な研究成果

主な研究トピック

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美しい渓流魚たちのDNAには

地形の歴史が刻まれている

①川の流れは永遠か?地形と生物分布についての研究

分水嶺、という言葉を聞いたことがあるでしょうか。僕にとってこの言葉は特別な響きを持っています。幼い頃に初めて日本海側(鳥取)に行く道中、「川の流れが逆や!」と驚いたことがあります。この「分水嶺」を越えると、上の写真のように川に棲む生き物のグループが変わる、ということが起こる場合があります。そして、今地図上に固定されていると思える川の流れや、峠の位置が地形の形成と共に変化してきた、ということが分かっています。地形の形成が生物の分布や種分化にどのような影響を与えてきたか、このような研究を始めたばかりです。


②暑がりの魚は大丈夫?冷たい水が大好きな魚の限界集落についての研究

 鮭(サケ)と言えば、北海道、東北地方。或いは、最近ではノルウェー産などもよく見かけます。この類の魚は冷たい水が好きなのです。一方で、最近の夏は暑い、冬場の雪が減った、という話をよく耳にします。大洋を自由に泳ぎ回る魚と違って、川の上流に棲む暑がりの魚はどうなっていくのか?このようなことも調べていきたいと思います。

・大阪湾および紀伊半島における
​ 魚類の生活史研究

生活史

生まれてから死ぬまでの生き物の一生を「生活史」と呼びます。寿命や成長率、繁殖期など基礎的な生活史情報は、魚類の保全や持続的な資源活用を目指すうえで不可欠なものです。

​我々は、かつて魚庭(なにわ)の海と呼ばれた大阪湾や、豊かな自然に囲まれた紀伊半島において、魚類がどのような一生を送っているのかを調べています。

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魚類の生活史の模式図。同じ種であっても、地域によって生きざまは異なる。大阪湾の魚たちはどのような生活史を送っているのだろう?

主な研究成果

主なトピック

①それぞれの「種」を対象にした生活史研究

 大阪湾・紀伊半島に生息する魚種を対象に、耳石を用いた年齢査定や成長率の推定、生殖腺の組織学的観察による繁殖期の推定などを行い、基礎的な生活史情報を集めています。生活史情報は、水産有用種の場合、各種の資源を減少させずに活用していくにはどうしたらいいかを検討していく材料となりますし、希少種であれば保全策の提言に貢献できます。これまで、最大体長が1 cmほどのゴマハゼ類から、1 mほどのスズキ類まで、多様な魚種を対象に研究を続けてきました。

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成魚でも1円玉に乗る​ゴマハゼ類

全長が1 m近くまで成長するヒラスズキ

②大阪湾における魚類の成育場に関する研究

多くの魚類は、稚魚が育つゆりかご(成育場)として沿岸の浅海域や汽水域を利用しています。それでは、沿岸域のほぼすべてを護岸され埋め立てられた大阪湾では、どこが魚たちのゆりかごになっているのでしょうか?小型地曳網や投網を用いた野外調査や、分子学的手法(DNA)を用いた室内実験から明らかにしていきたいと考えています。

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河口域での地曳網調査の様子

・沿岸域における魚類の群集生態学的研究

群集生態

ある場所に生息する生物の多様性や種組成は、水温や塩分といった物理環境、気候、その地域の歴史(地史)、種間相互作用など、さまざまな時空間スケールの要因が反映されることで決まります。多様な分類群である魚類では、どのようなプロセスやメカニズムでその群集が形成されるのでしょうか?

​これまで私は、潮間帯に形成されるタイドプール(潮だまり)とそこに現れる魚類を対象として、生活史様式と群集構造との関係に着目した調査を進めています。

主な研究成果

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干潟に形成された無数のタイドプール

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岩礁性タイドプールでも調査しています

主な研究トピック

①過酷な環境もなんのその?潮間帯の利用様式

潮の満ち引きによって現れたり沈んだりする場所を潮間帯と呼びます。くぼみには海水がたまり、タイドプールが形成され、魚類が取り残されます。こうしたタイドプールは環境の変動が激しく、ひどい時には水温が40℃(!)を超えることもあります。そうした過酷な環境の中で、魚類がどのように適応し暮らしているのか、種多様性や種組成がどのように決定されているのかを明らかにすることは、とても興味深いトピックです。私は特に琉球列島の干潟を研究の舞台にしてきました。


②群集と生活史様式との関係

近年、群集を構成する種の特性が群集構造へどのようなフィードバックを与えるかが注目されています。よく知られているのは群集への加入に大きな影響を与える「分散能力」や「競争能力」ですが、寿命や体サイズ、そのハビタットをどのように利用しているかなど、他の生活史特性も関連している可能性があります。群集の構成種それぞれがもつ特性(生活史様式)に着目し、水域における群集集合メカニズムの解明に迫りたいと考えています。

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